[概要]
本提案のスツールは座面自体が着座時の荷重によりたわみ、クッション性をもたらすことが特徴である。また、これは座り心地といった機能の向上のほかに、構造の新しいアイデアへの挑戦でもあった。一般的に成形合板技術を造形に生かす場合の多くは「面」の変化をみせる。これに対し、このスツールは複数の幅の狭い材を組み合わせて全体の形を構成している。そして制作に加え、座り心地の客観的要因を導き出すため、座面圧力分布測定装置による客観的評価と、アンケートによる主観的評価を用いて研究を行った。その結果、座り心地に影響する要因を導き出した。
[座り心地の客観的指標の導出]
試作用いて以下の検証を行った。
・座面圧力分布測定装置での測定 (20分着座 )
・使用感アンケート (5段階評価 )
この 2 項目のデータの相関を分析することで座り心地を示す客観的指標を導出することとした。中でもアンケート評価の推移と関係が強かったのが、座面の体の接触面積と荷重の集中度合いであり、接触面積が広いと座り心地が良いと評価され、狭い範囲に荷重が集中するほど座り心地が悪いと評価される傾向がみられた。さらに、着座直後と20分後のデータでも比較したところ、時間が経過するほど集中度合いが座り心地に影響を与えるという傾向も確認できた。
これを踏まえ、以下のような結果を導き出した。
・座面と体の接触面積が広いほど座り心地が良くなる
・座面圧力分布が狭い範囲に集中するほど座り心地が悪くなる
・時間が経過した後の座り心地には荷重の集中度合いがより強く効いている