くらしのデザイン実習Ⅰ 気仙沼フィールドワーク

11月15日(土)に「くらしのデザイン実習Ⅰ」の学外研修として、気仙沼市でフィールドワークを行いました。

はじめに訪ねたのは「リアス・アーク美術館」です。美術館は気仙沼湾を見下ろす丘陵地にあり、リアス式海岸と旧約聖書の方舟(アーク)がイメージされたという建築も見どころです。館内には、主に北海道・東北在住の作家の作品を紹介をする「美術作品常設展示」、“食”をキーワードに地域の歴史・民俗を紹介する「方舟日記」、そして2013年3月からは東日本大震災を取り扱った「東日本大震災の記憶と津波の災害史」が常設されています。
当日は学芸員の岡野さんより気仙沼地域の生業や食文化、津波等を含む自然との関わりなどについてお話いただいたあと、館内を見学しました。震災に関する展示では、館職員の方が撮影した写真や収集したモノ(館では「被災物」と呼び、人々の生活や記憶を伝える大切なものとして扱っています)、それらにまつわるキーワードが展示されています。また、「方舟日記」では民俗資料等から昭和30年代半ばの地域のくらしを学ぶことができます。歴史・民俗資料担当の学芸員、萱岡さんの「民俗資料を見てから震災の写真を見ると、写真の文化的解釈が深まる」という言葉が印象的でした。例えば、気仙沼は「カツオの町」と呼ばれるほどカツオ漁が盛んな場所です。そのことを知ってから、震災で路上に投げ出されたカツオの写真をみると、震災が物理的だけでなく文化に与えた被害の大きさを感じることができました。

つぎに気仙沼市に属する有人島、気仙沼大島を訪ねました。はじめに立ち寄った「ウェルカム・ターミナル」は大島の玄関口であり、飲食店や観光案内所も併設されています。当日はイベントが開催され、たくさんの方でにぎわっていました。また、屋台ではイカ、ホタテ、ホヤなど地元の海産物を食べることもでき、学生たちは胃袋でのフィールドワークも満喫したようです。

その後、大島で柚子農家を営む小山さんのお宅を訪ねました。ここで大島の郷土研究をされている小野寺さんとも合流し、おふたりのご案内で島内の史跡などを巡りました。小野寺さんは大島のご出身で、美術教員の傍ら地元の歴史や民俗を調査・研究されています。また、島内には過去の大津波の伝承が残る「みちびき地蔵」があり、東日本大震災で木彫りのお地蔵さまが流出した際には、小野寺さんが3体のお地蔵さまを新たに制作して奉納されたそうです。島内を歩いた後は、小山さん宅で自家製の柚子湯をいただきながら震災体験などを聞かせていただきました。津波が自宅の中まで押し寄せたこと、国内外からたくさんのボランティアが来てくれたこと、そして当時や現在の小山さんの思いなど…。学生たちは実際に現地を歩いたり、人からお話を聞いたりすることで、テレビやインターネットだけでは得られない学びが多くあったのではないでしょうか。

気仙沼地域は山も海も身近にあり、人々はそうした自然資源を利用して暮らしを立ててきました。「津波もそうした自然の一面であり、必ずまた起こるものとして考える。自然との”闘い”ではなく”共生”を前提に、減災を実施したい」と語ったのは、リアス・アーク美術館の岡野さん。その地域の人々がどのように自然と付き合ってきたのかを学ぶことは、自然災害との向き合い方を考えるヒントにもなります。それを知るためには現地を歩き、観察し、そして人から教わること。そんなフィールドワークの大切さを改めて感じた演習となりました。

非常勤助手

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