生活圏域からみたキャンパスタウンの比較考察−仙台市における郊外開発と世代構成に着目して−A Comparative Study of Campus Towns through Daily Life Sphere - Focus on Exurban Development and Generation Composition in Sendai City-
今川 可南子
昨今、少子高齢社会の到来が起きている一方で、都市中心部への人口集中が進んでいる。仙台市は震災以降、都市中心部の人口が増加し、密度も高まっている。また東北の中心拠点として発展してきた今日、支社や学校が多いことから流動人口が年間4〜6万人の推移がある1)。そのため、都市には多様な人々が暮らす生活圏域が存在している。仙台市の場合、「学都仙台」と呼ばれる歴史的な背景があり、大学が多い特徴から大学を地域拠点とした圏域が存在する。都市を特徴づける言葉(イメージ)の多くは、長い間変わることなく使用され続けてきたが、流動人口や都市の新陳代謝が高い昨今ではそぐわず、新しい造語・意味をさらに追加し、より都市イメージを曖昧にしている現状がある。
生活圏域に関する研究では、都市を面的にとらえた研究があり、GISを用いて生活利便施設を8分類29種類に分類しているが、生活圏域の中心となる拠点からの分析がされていないことから、本研究では、生活圏域の各都市にあった特徴となる拠点をとらえる必要があると考える。
そこで本研究では、仙台市における郊外開発と地域の世代構成に着目して、都市の特徴である大学を地域拠点としたキャンパスタウンの生活圏域の現状を比較考察を行いながら明らかにすること、加えて、多世代が共存しているまちにおける世代人口や生活圏域、協力関係を明らかにすることを目的とする。なお、本研究では、物理的にキャンパスがその地に位置し、居住地が開かれつつ、そのほかに生活に必要な施設があるまちのことをキャンパスタウンと定義し、生活圏域とは、生活に関する諸機能を維持された近隣住区、地区の範囲のことを指し、時間距離で1時間前後を目安とする。
本研究では、仙台市の都市の特徴である大学を中心拠点とした生活圏域に関する比較考察を行う。そのために、生活圏域を人口流動と大学立地の周辺状況に分けて見ていく。人口流動は、市のデータや、国勢調査のデータを基に、ArcGISで流動性を可視化させ、仙台市を俯瞰した図を作成し、分析する。また、大学立地の周辺状況は、まず大学の変遷を整理し、図の作成、ニュータウン事業時期を整理、用語の定義などを行い、ArcGISを用いて大学の門を中心に半径500m 圏域を設定する。さらに、生活利便施設のデータを反映させ、集計し、大学周辺の生活環境の実態を見る。作成した図の分類・考察し、ヒアリング対象地域を選定した後、核となる住民へヒアリングを行う。
本研究では、大学を一つの生活圏域の拠点としてとらえた時に、以下のことが明らかになった。
1.仙台市は、東二番丁を中心に近郊部・郊外部と広がりを見せ、郊外開発とともに都市が広がっていった(図1)。伴い、大学も移転・建設をし、その範囲は 直径20km圏に20校以上の大学が立地する都市が形成された。
2.各大学が立地する生活圏域の周辺施設や人口分布では、都心部は、購買施設、教育施設、福祉医療施設が多く、20〜40代が中心に分布していた。近郊部・郊外部では、レクリエーション施設が多く、 20代・60代を中心に分布していた(図2)。
以上から、都心部・近郊部のキャンパスタウンにおける大学の役割は、大学と地域の共助関係を築くことであると考える。また、今後大学移転が起きるまちでの長年築き上げたものが消滅してしまうことを懸念する。