仙台市中心部における視覚的側面からみる街路景観の特徴 −街路形成過程と街区変容に着目して−A Study of Streetscape in the Central Area of Sendai −Viewpoint of Modern Transformation of Roads, Blocks and Buildings−
結城 梨奈
近年、都市部の利便性の強化、防災・環境性能の向上などを目的とした都市再開発による街並みの変化が急速に⾒られるようになっている。宮城県仙台市では、高層オフィス・マンションの建設、大規模な道路整備などが実施され、地域特有景観が徐々に失われつつあることが危惧されている。2019年に「せんだい都心再構築プロジェクト」が始動したことをうけ、現在の街路景観の把握、今後の景観形成について検討が必要であると考えた。
そこで本研究では、都市が形成・展開される際に基準となる街路の形成時期に着目し、仙台市中心部の街路景観の特徴について明らかにすることを目的とする。
研究方法は、以下の様に進める。
①仙台市中心部の街路の形成時期と市街地の形成過程について文献調査を行なう。
②街路景観の分布については、既往研究を参考に、街区の平面形態について2種類、続いて建築物の用途・高さについて4種類に分類し、計8種類の街区タイプを設定し、実地踏査を行なう。
③視覚的構成要素の分析については、調査対象地域内で画像を撮影し、画像編集によって街路景観について視覚的側面から分析・考察する。
結果は以下である。
①不整形の街区は、⾼低差のある地形、鉄道路線の敷設、学校と公園の⽴地が不整形街区の分布に寄与している。
②街路の形成時期ごとに、街路景観の視覚的構成要素の割合において特徴がみられた。戦後から1950年代の街路では植栽の構成割合が高く、装飾の少ない簡素なものからガラス面など外観が多様な街路景観を形成していた。一方、1950年代の街路では、植栽の構成割合が低く、色彩や形態が類似した建築物が立地し、単調であった。1980年代以降の街路では、主に中高層建築物が立地するが、幅員が広いため空の構成割合が確保されていた。
③仙台駅西側では主に中高層化した景観構成がみられる。仙台駅東側では西側より多様な景観構成がみられ、駅周辺だが空地が存在し、中高層建築物と共存するタイプなど西側には分布していない景観構成タイプが分布していた。これは再開発や区画整理の影響が街路景観にあらわれていると考えられる。
④街路景観が形成されるにあたり影響する要素として、仙台市は都市計画道路かそれ以外かと、地形による影響が顕著にあらわれている。
これらの結果を踏まえ、仙台市では、仙台市では街路と街区が各々に形成・発展したことから、街路が一体的に整備され都市化が進んだ地域や、市民活動や条例により景観が維持されている地域など、様々な背景で存在している。そのため、今後はより地域の実態を考慮した景観形成が必要である。
主な参考文献
1)安藤直見,八木幸二,田口陽子:街区の立体構成による空間領域と量塊的イメージの形成 −都市中心部の街区構成に関する研究−,日本建築学会計画系論文集,第502号,pp.171-178,1997.12
2)仙台の歴史編集委員会:仙台の歴史,1989年
3)せんだい都心再構築プロジェクト,仙台市公式ホームページ,
2021年3月5日閲覧, https://www.city.sendai.jp/machizukuri-kakuka/toshinsaikoutiku/saikoutikupj.html