東北地方における手づくり市場の研究Study on Spaces, Players and Holding Schemes of Small Markets with Hand-made Products in Tohoku District
木村 一気
本研究は東北地方に存在する手づくり市場の空間的特徴とそれらを構成する三主体の実態について考察を行った。
まず、手づくり市場の発生プロセスや近年の都市部における先行研究を参照・概括し、マルシェと呼ばれる催事との混用にも留意しながら、本研究の示す「手づくり市場」の位置づけを明らかにした(第2章)。
次に東北地方における手づくり市場の事例を68件抽出、類型化した。公共施設を活用した季節やベント的なものから、定期的なものまで様々であるが、後者は人口集中地区に存しており、中心市街地における手づくり市の役割が浮かびあがった。 (第3章)。
さらに、うち13件の市場運営者にヒアリングを行った結果、多くが写真選考を行っていること、主催者のコンセプトが反映されやすいことが伺えるとともに、主対象2例においては、出店者・利用者の双方へのアンケートを行うことで、集客や売上よりはコミュニケーションを重視する傾向があることもわかり、販売の場としてだけではなく、商品に対する評価や人々の交流の場としての役割を担っていると考えられた(第4章)。
加えて、手づくり市場を実践することで、企画から開催プロセスを通して、出店者調整、場の調整、広報という3つの重要項目があることを示した(第5章)。
以上より、東北地方において、近年活気をみせている手づくり市場は、豊かな資源をもとにした様々な産品を商うとともに、それらの展示や体験、そして何よりもコミュニケーションの場として機能している事例が多いことが分かった。やや交通の不便な地域では中心施設を活用した季節イベントとして、人口集中地区ではより定期的な市として、地域の多様化に応じて企画・運営もまた多様化に展開している。